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BUS STOP No11『第43回東京モーターショー2013』バスの未来

『第43回東京モーターショー2013』温故知新の発想から見えてくるバスの未来

2013年11月22日(金)〜12月1日(日)、東京ビッグサイトで『第43回東京モーターショー2013』が開催されました。
華やかな会場の雰囲気と各社一押しの新車。ひときわ目立つ長蛇の列の先にあるのは、バスの車内見学入口です。
いつの時代も人の憧れを魅了してやまない大型自動車のバス。その過去から未来につながるバスと人との関わりを、さまざまな切り口で展示レビューとしてまとめてみました。バスの魅力がたくさんつまったモーターショーのバス展示をお楽しみください。

号

 

■人と街と環境にやさしい次世代のコミュニティバス

普通、急速2つの充電方式に対応。写真は急速充電
普通充電の充電口は、前部右側に設置されている
車椅子やベビーカーの乗降、大きな荷物の積み込みもラク
コンパクトでも、広いフロントウィンドウが魅力の運転席
超低床プラットフォームの原寸モデル(左)も展示された

●次世代のコミュニティバス・超低床「日野ポンチョ・ミニ」

『第43回東京モーターショー2013』のワールドプレミアとして注目を集めた「日野ポンチョ・ミニ」。次世代自動車として位置づけられる電気自動車(EV)として、都市型の公共交通を担うコミュニティバスのあり方を示す、大変興味深い展示。
「日野ポンチョ・ミニ」は、EVならではの、静かで、排出ガスゼロの環境にやさしい走行のほか、駆動部分を車体前部にコンパクトに収め、床下にバッテリーを収納することで実現したフラットな超低床が特徴。広い後部入口からベビーカーや車椅子での乗降がしやすく、大きな荷物も楽に積み込めます。
人と街と環境にやさしい乗り物としてさらに進化した「コミュニティバス」が、身近な公共交通として活躍する姿も、遠い未来ではありません。

【インタビュー】日野自動車・塩野さん
●前輪駆動でコンパクト、平な床が新コンセプト

「日野ポンチョ・ミニ」は、現行の「ポンチョ」に比べてより小さいサイズで、コミュニティバスとして、小回りがきいて、いろいろな場所に行けるような仕様にしています。電動になりましたので、エンジンの騒音も少なく、環境にもよい、より生活者の空間にも近づけるバスを目指しています。「ポンチョ」は、認知度も高く、自治体やバス会社にも関心が高いバスです。
前輪駆動型で、コンパクトなEVだから、いままでなかった平な床が実現できています。このような仕様から、横からでも後ろからでも車椅子や乳母車のアクセスが可能という、新しいコンセプトが提示できます。
展示しているプラットフォームをご覧いただくとわかる通り、床下に配置した4つのバッテリー以外は、すべて前部にまとめています。バスのほか、トラックにもしやすい形状です。こちらはモーターショー用に、できるだけ見やすくシンプルにして、展示しています。

●運送会社の集配車として実証試験を開始

商用車の実証試験として、半年前から運送会社でも集配車として実際に導入をいただいて、1年くらいかけて検証する予定です。クリーンで静かなEVの性能のほか、モータードライブなので、2(ツー)ペダルで、ギアシフトなしでスムーズな発進ができます。トルク切れもなく、イージー&スムースドライブをセールスポイントにしています。
200Vの普通充電(8時間)、急速充電(45分程度)を導入し、充電設備のよしあしについても、実験で確認していただいています。後続距離は、状況によって異なりますが、トラックのレベルだと、1充電当たり30〜50km程度です。冷凍車のバッテリーとして使用する場合は、後続距離は少なくなりますので、運送会社では、30〜40kmは走行しています。
この実証試験で注目するのは、春夏秋冬を通じて、運行していることです。現在の実験は東京地区で行っています。消費電力のほか、気候が充電器に直接与える影響も考えられるため、北海道などの寒冷地での実用は厳しく、あくまでもシティユーズだと思っています。

●日野自動車の環境対応車戦略

環境対応車においては、移動距離と積載量で戦略が変わってきます。展示したコミュニティバスや集配車のように、距離が短くて小さい車であるなら、EVに可能性があると考えています。EVでは難しい大型車の場合はHV車やディーゼルなどで、さらにいま最も注目されているのが燃料電池車です。将来の環境対応車の本命といわれているものの、水素供給のインフラに課題がありますが、2016年をターゲットとして燃料電池車を出していこうと考えています。

クルーザリフトに持ち上げられる「SKY DUCK」号

 

■「災害」や「緊急時」にも対応できる、外部給電機能を搭載した次世代バス

クルーザリフトに持ち上げられる「SKY DUCK」号

側面に描かれたイラストの通り、後部にディーゼルエンジン、前部に大容量リチウムイオンバッテリーを搭載したPHVタイプ

「移動診療車」向けに改装したバス後部
監視システムなどを搭載した運転席
外部給電装置からの給電の様子
100V、200Vの給電口を備えた外部給電装置

●日野自動車の「日野メルファ プラグインハイブリッド」

もし、このバスが東日本大震災の時に存在していれば...。外部給電機能を搭載した「日野メルファ プラグインハイブリッド(PHV)」は、地域の公共交通を担う足としてだけでなく、機動力のある地域の防災拠点としての役割や可能性についても図り知れない能力を備えています。
「日野メルファ PHV」は、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載し、市街地や短距離区間ではEV走行、長距離や登坂時にはハイブリッド走行が可能で、外部への給電機能も備えています。
ディーゼルエンジンで発電した電力を大容量バッテリーに蓄積し、車内や外部へ供給することができるため、長時間の給電も可能となります。
災害時の避難所への電力供給の際には、燃料タンク100リットル分の軽油があれば、体育館の照明を30時間程度点灯させることができます。

【インタビュー】日野自動車の高坂さん
●スクールバスの「実証試験」

日野自動車の高坂さん 今回は「移動診療車」のコンセプトで展示していますが、実際にはもっといろいろな用途があると考えています。この10月〜11月にかけて、岩手、宮城、福島などの東北地方に行ってきましたが、実際には被災地の東松島市で、仮説住宅と学校を結ぶスクールバスの路線にて、実証試験をしてまいりました。何かあった場合には、外部給電装置で100V、200Vの給電ができ、200Vなら体育館への給電も可能です。実証試験では、通常の走行システムやバスロケシステムなどの実験ツールを搭載しています。
この車は、走行中にEVやハイブリッドなどにも切り替わります。モーターであればEV走行、エンジンではハイブリッド走行になります。バッテリーの容量が少なくなるとエンジンがジェネレーターとして駆動して、発電するしくみになっています。もしも、バッテリーが少なくなっても、軽油を補給すれば発電できるというしくみで、100リットルの軽油で248kw/h出すことができます。一般家庭では25日間の電気量になりますが、体育館の場合は400Wの水銀灯が20灯使われていますが、その半分くらいに節約して60時間くらい使えます。夜間だけ使用すれば、約1週間程度は使えます。実際の体育館には配電盤が必要なため、実証試験では照明を持ち込んで、試験しました。

●「日野メルファ PHV」の可能性

実証試験中に女子マラソンがあったので、その時には無線機用の給電にこのバスを使用しました。いろいろな使い方を検証していますが、平常時にはマラソン大会などのイベントでも使えますし、陸前高田市を訪れた時には「産業祭り」に展示させていただきました。イベントはもちろん、災害、事故などが起ったときにも、発電機代わりにこのバスが使えます。
「移動診療車」としては、レントゲンの電源などのお話もありましたが、具体的な容量は不明です。
そのほか、EVとPHV走行が特徴ですので、バスにGPSを積んでいてどこにいるかがわかるため、病院や学校がある市街地では自分で判断してEV走行することができます。エリアごとに静かで環境にもよいEV走行を指定することも可能です。
監視システムも搭載しており、10台のバスが走っていれば、それぞれがどれくらいの電気容量が残っているのか、それぞれの車両がどこにいるのかもわかります。事故や災害が起った場合でも、ドライバーとの電話連絡のほか、WiFi設備もありますのでインターネットに接続して災害情報の受発信もできますし、災害時の簡易オフィスとしての機能も備えています。
実証試験では、実際にパソコンでバスの位置をご確認いただきました。スクールバスの発着の確認や、到着時刻の確認などもパソコンやスマホでもできます。スクールバスは朝晩だけの利用ですので、昼間はコミュニティバスとして活用するなど、日頃の使い方を検討することが、重要だと思います。
このバスは2ステップですが、地域の悪路の条件なども想定して、車両を選定しています。女川町の「健康祭り」では、目の検査の車両も「日野メルファ」で2ステップ車でした。運転士さんに確認しましたが、やはり道が狭く、荒れているところもあるので、この車両にしたと話していました。
地域ごとにこのような車両を配置して、隣町どうしで融通し合うこともできるのではないかと思っています。

■「メイド・イン・ジャパン」の信頼を培い、日本のバス事業を支えたメーカーの技術と歴史

クルーザリフトに持ち上げられる「SKY DUCK」号

ウーズレーCP型1.5トン積みトラック。国産化に着手した矢先に関東大震災が発生。図面や工作機械の多くを消失したが、翌1924年に第一号車を完成させた

2011年の東京モーターショーで走行した「スミダM型バス」
国内に現存する実走可能な最古の国産バスで
経済産業省の「近代化産業遺産」にも認定されている

●日本のバス事業110年を支えた、いすゞ自動車の歴史
「ウーズレーCP型1.5トン積みトラック」

いすゞ自動車の前身・東京石川島造船所が、イギリスのウーズレー自動車と提携し、1922年(大正11年)に国産車第一号の「ウーズレーA9型」を発売。その翌年に国産化に着手したのが、今回のモーターショーに出展された「ウーズレーCP型1.5トン積みトラック」です。直後に関東大震災が発生し、図面や工作機械の多くが焼失しましたが、1924年(大正13年)に第一号車を完成させました。

2011年の東京モーターショーで走行した「スミダM型バス」

国産バス製造の気運が高まる1929年(昭和4年)、いすゞ自動車の前身・東京石川島造船所は、さらに国産初のバス「スミダM型バス」を製造しました。2011年の東京モーターショーでは、この歴史的なバスが走行する様子を、見ることができました。昭和初期に本格化した日本のバス事業も、当時はノックダウン方式による米国のバスがほとんどでした。国産バスの登場とバスの近代化によって、日本のバス事業はさらに発展し、黄金期を迎えることとなります。いすゞ自動車が、日本のバス事業に果たした役割は、大変大きなものでした。

■身近なバスの未来に向けて、人に、環境にやさしいバスが日本の標準

いすゞ自動車の村角さんと「エルガ ハイブリッド」
見慣れた車内風景の中にさまざまな技術が凝縮されている

●いすゞ自動車の大型路線バス「エルガ ハイブリッド」

大型路線バス「エルガ ハイブリッド」。ディーゼルエンジン、オートクラッチ、モーター、AMT(自動変速式マニュアルトランスミッション)、リチウムイオンバッテリーで構成され、モーターとエンジンが効率よく働くパラレル方式ハイブリッド路線バスです。
発進時はモーターのみでスタート。加速時はモーターがエンジンをアシストし、定常走行時はエンジンのみで走行します。また、減速時には回生ブレーキでエネルギーを回収しバッテリーに充電し、停止時にはアイドリングストップモードにより、エンジンを自動停止します。発進・停止の多い路線バスに最適な、低燃費で環境にもやさしいシステムです。

【インタビュー】いすゞ自動車の村角さん
●低燃費で環境にやさしい都市型のバス

ハイブリッド車にすることで、ディーゼルバスに比べて実燃費が20%ほどアップしています。燃費値は4.9km/lで、さらにミッションについてもAMTを採用し、自動変速式でイージードライブ化を実現しました。環境にやさしいバスとして、都市部を中心に、普及しています。

 「エルガ ハイブリッド」の主要スペック
駆動方式 4×2(後軸2輪駆動)
サスペンション フロント:円形スリーブ空気ばね
リヤ:円形スリーブ空気ばね
変速機 電子制御式自動6段変速機
(手動モード付)
エンジン形式 6HK1-TCC
総排気量 7,790cm3(cc)
燃料供給装置 電子制御式燃料噴射(コモンレール)装置
最高出力 最高出力191kW(260 PS)/ 2,400/rpm(ネット値)
最大トルク 最大トルク761N・m(77kg・m)/1,450・2,200rpm(ネット値)
重量車モード燃費値 4.90km /ℓ
寸法(mm) 全長10,425×全幅2,490×全高2,965
乗員定員 71人(座席27+立席43+乗務員1)
車両総重量 14,265Kg



■より快適に、より安全に! 人にくつろぎと安心の空間を提供するデラックスカー

クルーザリフトに持ち上げられる「SKY DUCK」号

ゆったりと、快適に過ごせるシートが用意されており
夜行バスとしての活躍が期待できる
マッサージチェアーの機能を付加したシート

●三菱ふそうトラック・バスの「エアロクイーン」

車内見学に長蛇の列ができて、会場でも目を引く存在だった三菱ふそうのスーパーハイデッカー「エアロクィーン」。大きなもの、雄大なものに魅了される人間の本能からなのか、さまざまな展示会の車内見学でも、長蛇の列ができるのも珍しくはないそうです。

【インタビュー】三菱ふそうトラック・バスの久保さん
●高速乗合バスと世界旅行をイメージした、快適なバス空間

今回の展示は、世界旅行をイメージしたコンセプトです。本来はセンタートイレも設置すべきですが、この展示では13脚のシートにしています。
バス会社さんに納品するときは、各社の仕様にカスタマイズされますが、現状の仕様を利用したいという商談も実際には受けています。
大手百貨店系の旅行会社などでも、貸切観光バスとしての利用が見込めていますので、今後は貸切観光バスとしての用途も期待できると思っています。


現代自動車ジャパンの「ユニバース」
●貸切観光バス、高速バスとして日本に定着

「ユニバース」は、平成22年(2009年)の発売以来、比較的安価で、日本の厳しい排気ガス規制にも対応したモデルとして、貸切観光バスや高速バスとして定着してきました。右ハンドル仕様で、LED車内照明、32インチ液晶モニター、後方確認カメラとモニター、坂道発進補助装置などが装備されています。

【インタビュー】現代自動車ジャパン・福田さん
●独立3列シートを採用した高速バス向けの仕様

今回の展示では、通常販売しているバスに、ニュープレミアムシートを追加して、従来なかった独立3列シートを採用しています。
これから需要が伸びていく高速バスに向けた仕様です。

独立3列シートで、ゆったりとした明るい空間が確保されている車内

ドライバーモニターなどの安全技術が装備された運転席

■安全技術を進化させた日野自動車「日野セレガ」
【インタビュー】日野自動車・手塚さん

「PCS(プリクラッシュセーフティ)」衝突被害軽減ブレーキシステムが進化しました。
カメラと警報で車線逸脱を知らせる「車線逸脱警報装置」、ドライバーの目の開閉状態と顔の向きを検知する「ドライバーモニター」などの安全技術が「日野セレガ」の特徴です。

※「PCS」はトヨタ自動車(株)の登録商標です。

 「日野セレガ」の主要スペック
エンジン形式 E13C
排気量(L) 12.913
トランスミッション形式
変速段数
マニュアル6段
寸法(全長×全幅×全高)mm 11,990×2,490×3,750
乗員定員(人) 46
車両総重量(Kg) 15,330



インタビュー後記

華やかな東京モーターショーの中では、出展数も限られているバスですが、意外な人気を集めていることを改めて目にすることとなりました。「普段なかなか乗る機会が少ない大型バスは、どの展示会でも人気がありますね。他社のバス展示でも、いつも長蛇の列ができています」と答えていただいたのは、三菱ふそうトラック・バスの久保さん。もっと多くバスに触れていただくと、バスの普及につながるのではとのコメントでした。
トラックやバスなどの商用車の場合は、当然ながらB to Bの商談が展示会の前提です。ただし、バスの場合は少し特殊で、最終的には利用者がそのよしあしを判断することがあるのも事実です。歴史的な背景がある乗り物には、乗り心地よりもその文化的な価値感によって、人は「乗る」ことに意義を見つけます。バスの利用目的は実用性が一番ですが、「付加価値が利用者の心を揺さぶる」という点も、やはり見逃せません。
技術と快適さ、開発・製造するメーカーと運行するバス事業者。目的や立場は違っても、「すばらしい技術や文化的な価値感」を、共に利用者に向けて共有・アピールすることの大切さを感じました。


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